3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」

ドイツBigRepが、電気自動車のデザインプロトタイプ「Loci」を公表しました。モーターやバッテリーなどの電子部品を除くパーツの多くを、3Dプリンターで出力しています。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
3Dプリンターで出力した電気自動車 BigRep「Loci」

BigRepは2018年5月には3Dプリンターで出力した自転車用タイヤを、11月には電動バイクを発表した企業。電動バイクは未来的なデザインで話題になりましたが、今回発表された「Loci」も、SF映画に出てきそうな外観とされています。


3Dプリンターによるバイク「Loci」
参考画像:BigRepが3Dプリンターで出力した電動バイク

「Loci」のサイズは85x146x285センチとかなり小型。通勤用などで利用できるシングルシーターのパーソナルモビリティです。BigRepは「Loci」のような小さな電気自動車が普及することで、通勤時間帯の渋滞を軽減できるとしています。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
「Loci」はシングルシーターのパーソナルモビリティ

実際には、現時点ではシングルシーターが3Dプリンターで出力できる限界サイズなのかもしれません。パーツの出力にはBigRepの3Dプリンター「Pro」や「One」が使用されていますが、これらプリンターよりも大きなパーツは出力できないためです。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
BigRepの販売する産業用3Dプリンター「Pro」
プリンター本体よりも大きなパーツは出力できません

さて、BigRepが「Loci」で目指しているのは、オンデマンドでのクルマの製造。実現すれば利用者がクルマを欲しいと思ったときに、最寄りの3Dプリンターで出力・組み立てできるようになります。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
クローズアップ画像を見ると
これが3Dプリンター出力物ということがよくわかります

大規模な施設が不要なので、少量生産が容易となります。部品サプライヤーからの納品数や納期に、自動車工場の稼働が左右されることもなくなります。何よりも、完成車両を倉庫に眠らせたり、工場から離れた場所まで輸送したりといったムダがなくなります。

3Dデータを書き換えることで顧客の要求に簡単に応えられるのも、「Loci」の大きなメリット。利用される場所の天候や道路状況などに合わせてボディの形状をアジャストしたり、タイヤの素材を変更したりできます。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
データ修正は比較的容易

BigRepはこれをわかりやすく説明するため、「Loci」の3つのバージョン「ベルリン」「サンフランシスコ」「ドバイ」を紹介しています。今回公開されたバージョンは「ベルリン」と呼ばれるもの。LEDライティングシステムやTPUエアレスタイヤなどが装備されています。

「サンフランシスコ」は交通渋滞を軽減するために、より細いボディが与えられたバージョン。雨に対応するため、ルーフとリフトアップドアが採用されました。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
交通渋滞軽減のため、より細いボディが与えられた「サンフランシスコ」

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
2人乗りです

「ドバイ」モデルはエアポートから空港までの送迎向けにデザインされたハイエンドモデル。ゴージャスな内外装が装備されています。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」
ゴージャスな「ドバイ」

このように、ベースとなる部分以外を比較的自由に簡単に変更できるのが、3Dプリンターで出力される自動車の強み。いまはまだデザインプロトタイプの段階ですがもう少し進化すれば、BigRepの3Dプリンターを活用して見たこともないクルマを製造するスタートアップ企業などが登場するかもしれません。

3Dプリンターで出力する電気自動車 BigRep「Loci」