米国最大の博物館であるスミソニアン博物館を運営するスミソニアン学術協会が、kickstarterでの出資者募集キャンペーンを開始した。

スミソニアン博物館がkickstarterでのキャンペーンを開始
スミソニアン博物館がkickstarterでのキャンペーンを開始

アポロ11号が月面着陸に成功してから、2019年7月で50周年を迎える。スミソニアン博物館群の1つである国立航空宇宙博物館はこの50周年を記念し、人類で初めて月面に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロング氏が着用していた宇宙服の保存およびデジタル化を決定。そのための資金をkickstarterで調達することとした。


宇宙服を着用したニール・アームストロング氏
宇宙服を着用したニール・アームストロング氏

その宇宙服の現在の状況
その宇宙服の現在の状況

ニール・アームストロング氏の宇宙服は、他の宇宙服と一緒に保管庫に保存されていた。保管庫は温度や湿度などが一定に保たれた場所であり、一般には公開されていない。

保管庫から移される宇宙服
保管庫から移される宇宙服

意外なことだが、アポロ計画で使用された宇宙服は、現在、博物館のコレクションの中でも、もっとも脆弱な所蔵品として扱われているという。アポロ宇宙服は、酸素の無い月面で宇宙飛行士を安全に保護する目的で製作されたもの。博物館で何百年も保存されるようには設計されていなかったためだ。

例えば、宇宙服の左肩に配置された星条旗は光によって退色が進行している。特に赤色の退色が激しい。星条旗を織る際に使用された絹繊維も劣化が進んでいる。また、宇宙服のポケットなどにはオレンジ色の染みがついてしまっている。

宇宙服の“痛み”の例
宇宙服の“痛み”の例

今回のプロジェクトでは星条旗の退色/劣化の進行を食い止めたり、染みの原因を突き止めて展示までに染みを完全に取り除いたり、といった作業が行われる予定だ。このような作業により、宇宙服の長期保存を目指す。

宇宙服の現状調査の模様
宇宙服の現状調査の模様

その他、プロジェクトでは宇宙服を3Dスキャンし、21層構造で製作された宇宙服をデジタル映像で観察可能にする。またグローブなどを3Dプリントし“触れる展示”とする計画も用意されている。このようにして準備された宇宙服や3D映像、3Dプリントされたパーツなどは、2019年のアポロ11号ミッション50周年記念の展示会「Destination Moon」で公開される予定だ。

2019年の展示イメージ
2019年の展示イメージ

出資者には様々な特典が用意されているが、日本人にとって魅力的なものはそれほど多くはない。このプロジェクトはあくまでも、人類の遺産とも言える宇宙服を保護し、将来新たな宇宙技術を開発するかもしれない子どもたちのために残していくためのもの。出資した見返りは、宇宙技術の発達に貢献できるという喜びにあると言えるだろう。

宇宙服を着用して月面を歩く宇宙飛行士バズ・オルドリン氏の画像  撮影はニール・アームストロング氏
宇宙服を着用して月面を歩く宇宙飛行士バズ・オルドリン氏の画像
撮影はニール・アームストロング氏