「ロサンゼルスにはディズニーランドリゾートがあるけど、サンフランシスコには面白いテーマパークがない。ジェットコースターに乗れない街なんて、つまらない」


サンフランシスコを訪れた観光客の中には、このような暴言を吐く人がいます。


この認識は間違っています。確かに、サンフランシスコ/ベイエリアのテーマパークはちょっとしょぼい。それは認めましょう。でも、サンフランシスコには世界でもまれな、「急な坂」があります。この坂を自動車やケーブルカーで走れば、ジェットコースター並みのスリルが味わえるんです。場合によっては、そのスリルは、L.A. のテーマパーク以上かもしれません。

サンフランシスコは坂の多い街です。かつては、登坂には馬車が使用されていたそう。でも過去には、馬が坂で足を滑らせ、馬車が坂の下まで落ちて5頭の馬が死ぬという事故があったのだそうです。テーマパークのコースターのように安全が保証されていない分、サンフランシスコの坂の方が怖いと言えるかもしれません。

ここでは、そのサンフランシスコの坂を最も楽しめる(?)スポットを紹介しましょう。

■ロンバートストリート…ではないのです

サンフランシスコを訪れた経験のある方は、その坂はロンバートストリートだと思われたことでしょう。確かにロンバートストリートは美しい坂道。多くの観光客が訪れます。

サンフランシスコの観光名所ロンバートストリート
サンフランシスコの観光名所ロンバートストリート

「世界一曲がりくねった坂道」として有名ですが、  「世界一美しい坂道」と呼ばれることもあります
「世界一曲がりくねった坂道」として有名ですが、
「世界一美しい坂道」と呼ばれることもあります

また、このロンバートストリートで、サンフランシスコ名物のケーブルカーに搭乗し、下り坂でバーにつかまって「立ち乗り」すると、かなりのスリルを味わえるのも事実です。

これも名物、ケーブルカーの「立ち乗り」
これも名物、ケーブルカーの「立ち乗り」

ケーブルカーのルートは、実は結構過激。急坂を下りたところで急カーブを強引に曲がる、なんていうルートもあります。筆者は以前、バーにつかまって立ち乗りしていた人が、カーブの激しさに耐えきれず道路に落ちていくのを目撃したことがあります。また、自分自身が立ち乗りをしていて、対向車にぶつかりそうになったこともありました。

ロンバートでケーブルカーに乗車し
ロンバートでケーブルカーに乗車し

立ち乗りで急坂を下るのは、
立ち乗りで急坂を下るのは、

ちょっとしたアトラクションと言えます
ちょっとしたアトラクションと言えます

どうです?命がけですよね?こんな怖い思いは、安全を保証されたジェットコースターではちょっと味わえません。

でも、サンフランシスコの坂を最も楽しめるスポットとは、ロンバートではないのです。

■フィルバートとハイドが交差する場所です

そのスポットは、フィルバートストリートとハイドストリートがクロスする場所。ここは恐らく、ロンバートストリート以上に急な坂です。なのに、ロンバートのようにくねくね曲がっておらず、道は真っ直ぐ。このため、ロンバート以上に、急な坂を楽しめるわけです。

サンフランシスコのおススメスポット  フィルバートストリートとハイドストリートがクロスする場所です
サンフランシスコのおススメスポット
フィルバートストリートとハイドストリートがクロスする場所です

この坂を最大限に楽しみたいという方には、レンタカーを借りて坂を下ってみることをおススメします。実際に自分でハンドルを握って坂を下ると、かなりのスリルを味わえます。その感覚は、まるでジェットコースター! ちなみに、助手席にいる人はもっと楽しめるみたいですよ。

この道を下る自動車は、後ろから見ていると、坂に落ちて消えてしまったかのように見えます。

こんな大きな SUV 車も
こんな大きな SUV 車も

この坂を下ると
この坂を下ると

消えていきます
消えていきます

別角度から見てみます
別角度から見てみます

黒い自動車が
黒い自動車が

吸い込まれるように消えていきます
吸い込まれるように消えていきます

ではこの坂、傾斜は何度なのでしょうか?日本から持参した傾斜計で測定すると、その角度は18度から21度でした。日本と違い、道路がかなりでこぼこしているので、正確な傾斜角を計測するのはちょっと難しいのですが、それにしてもすごい角度です。

その角度は18度から21度!  自転車ではほぼ登坂不可能な角度です
その角度は18度から21度!
自転車ではほぼ登坂不可能な角度です

自動車が水平になるように画像を加工すると、家がこれだけ傾きます。まるでミステリーハウスみたいですね。

こんな家、住みたくないなぁ…
こんな家、住みたくないなぁ…

筆者はこの道路に駐車をしてみました。その結果わかったことは、「自動車のドアは、意外と重い」ということ。重力に反してドアを持ち上げないと車から出られないため、ドアが通常の何倍も重く感じました。一方、助手席側のドアを開けるときには、右隣の車にドアがあたらないよう気を付ける必要がありそうです。

ちなみに、この付近の坂を走る際には、オートマチック車をおススメします。理由は、坂の途中に何度も一時停止サインがあるため。ここでの坂道発進では、AT 車でもかなりの勢いで車が下がります。MT 車での坂道発進は、あまりにアドベンチャーでおススメできません。

あの位置でストップしろって…?
あの位置でストップしろって…?

■おまけ:スリルはないけれど…坂マニアにおススメなのが「モラガ階段」

サンフランシスコは坂が多い街。このため、階段の数も多い街です。そして、この街には、「世界でもっと美しい階段」とも「世界で6番目に長いモザイク階段」とも呼ばれる「Moraga Stairs(モラガ階段)」もあります。

世界でもっと美しい階段「Moraga Stairs(モラガ階段)」
世界でもっと美しい階段「Moraga Stairs(モラガ階段)」

モラガ階段は、この近所に住む人たちの寄付と、やはり近郊に住むアーチストの貢献により2005年の9月に完成した階段。その段数はなんと163段にもなります。四国香川の金刀比羅宮の1,368段には遠く及びませんが、それでも一気に駆け上るのはかなり苦しい段数です。

モラガ階段の段数は163段  観光客は、休みながら登ります
モラガ階段の段数は163段
観光客は、休みながら登ります

でも、一番上まで登りきると、美しい街並みを楽しむことができます。

晴れている日は、本当にきれいらしいですよ
晴れている日は、本当にきれいらしいですよ

階段は上から見下ろすと、普通の階段。でも、下から見上げると、美しいモザイクが見えるようになっています。モザイクは階段を登るに従って雰囲気を変えていくので、観光客は踊り場で立ち止まっては写真を撮影しています。

モラガ階段中ほどから見えるモザイク  ここから上に登ると
モラガ階段中ほどから見えるモザイク
ここから上に登ると

こんな景色となります
こんな景色となります

ここまできたら、頂上はすぐそこ!
ここまできたら、頂上はすぐそこ!

1つ1つのモザイクも、結構かわいい
1つ1つのモザイクも、結構かわいい

いかがでしょうか? サンフランシスコが予想以上にスリルに溢れた街だと理解していただけたでしょうか?

カリフォルニアを観光で回る場合、ロサンゼルスをメインにして予定を組み、サンフランシスコは半日で済ます人が多く存在しますし、実際、半日で十分だったと言う声も耳にします。でも、ちょっとだけ深堀すると、サンフランシスコも意外と楽しめる街になりますよ。

モラガ階段全景  最上部付近は霧で覆われています
モラガ階段全景
最上部付近は霧で覆われています

モラガ階段の近くにはかわいらしい家が立ち並び  ダウンタウンとは違う雰囲気を醸し出しています
モラガ階段の近くにはかわいらしい家が立ち並び
ダウンタウンとは違う雰囲気を醸し出しています