「Lightyear One」は太陽光だけで走れる電気自動車。オランダ企業Lightyearが開発しており、2019年6月25日にはそのプロトタイプを公表しました。



車両の上部に5平方メートルにおよぶソーラーパネルを装備しているのが特徴です。5平方メートルとは、3畳間の床と同じくらいの面積。3畳のアパートに寝泊まりした経験がある人ならその広さがわかるでしょう。



とはいえソーラーパネルを多く装備しても、長距離の走行が可能になるとは限りません。例えばドイツSono Motorsの「Sion」は車両の上部だけでなく、横にも後ろにもびっしりと太陽電池を貼った電気自動車です。が、これだけソーラーパネルを装備した「Sion」であっても、7月のドイツで34キロ走るのがやっとなのです。


ではLightyearはソーラーパネルだけで走行する電気自動車の実用化に向けて、どのようなアプローチを取っているのでしょうか？同社CEOのLex Hoefsloot氏は、エネルギー効率の高いドライブトレインが実現のカギだと主張しています。


同社のモーターは4つのホイール内に組み込まれたタイプ。一般的な電気自動車と異なり、トランスミッションやアクスルなどの動力伝達機構を介さず、モーターが直接路面にパワーを伝達する仕組みのためエネルギーロスが発生しないのだとか。


この高い効率のモーターにより、「Lightyear One」は1時間の太陽光充電で12キロ走行できるようになったのだそう。通勤で使う場合、仕事をしている間に駐車場に8時間置いておけば、100キロ走行可能な電力を太陽光から生み出せるそうです（注：天候によります）。


Lex Hoefsloot氏は、電気自動車の普及には充電ステーションの増加が重要であるとします。でも欧米や一部アジアの国をのぞけば、充電ステーションの普及にはまだまだ時間が必要。その点、「Lightyear One」ならまだ充電ステーションのない国の人でも電気自動車の恩恵を受けられます。またキャンプなど、充電ステーションの無い場所で数日過ごす場合にも「Lightyear One」は有効。これらがLex Hoefsloot氏が「Lightyear One」の開発を思い立った動機だそうです。


とはいえ実際に使うとなると、雨が続くこともあるでしょう。また北欧などでは、季節によっては日照時間が極端に短くなることも。「Lightyear One」は、家庭用のコンセントからの充電も可能にしています。家庭用電源からは一晩充電すれば400kmの走行が可能なのだとか。その他、急速充電などにももちろん対応しています。


ちなみに0-100km/h加速は約10秒とかなり遅めです。もっともこのクルマに「シートに身体がめり込む加速力」を求める人はいないとは思いますが。


Lightyearは現在、500台限定で「Lightyear One」の予約を受け付け中。予約価格は11万9,000ユーロ（約1,460万円）。納車開始は2021年に予定されています。