エンジンをスタートさせ、ATレバーをドライブに入れるまでは、一般的なクルマの操作と同じだ。だがそこから先は違う。クルマを前進させるにはアクセルを踏むのではなく、自転車ペダルを漕がなければならない。漕ぐペースが速ければ速いほど、クルマのスピードも速くなる。まるで、特撮テレビ番組『ジャンボーグA』に登場するロボットジャンボーグAや、映画『パシフィック・リム』に登場するイェーガーに搭乗したような気分を味わえる…かもしれない。
Al Shawaf氏とBPOはAudi A4 Avantをベースとしたプロトタイプを製作し、動画で公開している。動画を見る限り、プロトタイプはペダルを漕ぐペースとクルマの加速感が一致しており、自分の足でクルマを走らせているような錯覚に陥りそうになる。また、自転車ではありえないスピードにまで、ペダルを漕ぐことで到達できるので、自分のパワーが増したような爽快な気分になれる。
なお、ペダルを漕いでもそれによって発電され、バッテリーが充電されるといった機能は装備されていない。ペダルは単に速度調整のためだけに存在している。では「FitCar PPV」は何の目的で開発されているのだろうか?
考案者のAl Shawaf氏は毎朝の通勤時、渋滞の中でいらいらしながら朝1時間、夕方1時間の合計2時間をじっとクルマの中で過ごしていたという。この無駄な時間を有効に活用する手段はないかと考え、「FitCar PPV」の開発を思いついたそうだ。
これはムダだという思いが「FitCar PPV」開発の動機
「FitCar PPV」で通勤すればオフィスに到着するまでの間ずっとペダルを漕ぎ続けることになり、利用者はエクササイズを強要(?)される。これを週に5日継続すれば、かなりの運動量になるはず。
渋滞でクルマが動かないときのために「No Drive」モードも装備された。これはペダルを漕いでもクルマが前進しないモード。「FitCar PPV」をジムのエアロバイクのようにしてしまうものだ。このモードは、事故渋滞などで完全に交通の流れが止まってしまったときでも、エクササイズを可能にする。
Al Shawaf氏とBPOはオランダ陸運局(RDW)に対して「FitCar PPV」の欧州での公道走行許可を申請しており、認可がおりるのを待っている。認可を取得した後は自動車メーカーに働きかけ、「FitCar PPV」の製造を委託したいとしている。
そんな日がやってくる??