青春18きっぷを奈良のシカがむさぼり食った件が、インターネット上で話題になっている。ズタズタになった切符を確認した JR の駅員が、そのまま被害者が鉄道を利用できるよう計らった対応も評価を集めたようだ。

Twitter ユーザーの厚意により許諾を得て転載
Twitter ユーザーの厚意により許諾を得て転載

青春18きっぷといえば、日本全国の JR の普通・快速列車などが自由に乗り降りできる、のんびりした旅行の友。料金は1万1,850円で、1枚のきっぷを1人で5回まで利用できるほか、5人で1回などのグループでの利用も可能だ。


そんな切符を使って、とある Twitter ユーザーが関西旅行を楽しんでいたところに、その悲劇は起きた。犯人はシカ。かわいい外見と裏腹に獰猛なまでの食欲で知られる彼等は、容赦なく襲いかかり、ポケットの中にあった切符を奪い、食いちぎったという。

被害者はポケットに入れっぱなしにしていた自分の責任と落胆しつつも、 相談のため JR のみどりの窓口に持ち込んだ。対応した駅員は困ったようすで分厚いファイルを出し、必死に調べ、結果として「4回目に押印(スタンプ)がないことが確認できるので、4回目、5回目は使用できるように」と手配してくれたという。

この話題は Twitter で瞬く間に広がると、あちこちのニュースサイトが群がり取り上げて注目を集めた。

えん乗り編集部が、この件について JR 西日本の広報に問い合わせたところ、初耳とのことで「ほのぼのした話題ですね」と回答があった。

続けて、奈良では切符がシカにむさぼり食われる被害はよくあるのかと尋ねると「聞いたことはないですね…」ととまどい気味の返事。また切符はどこまでかじられても大丈夫なのかと質問すると、さらに困惑したようすで「紛失時の規定はありますが、シカに食べられた場合は…恐らくケースバイケースになるかと」と話していた。

やはり JR 側にマニュアルがある訳ではなさそうだ。切符をむさぼり食われた被害者も気の毒だが、対応した駅員の苦慮も想像に難くない。

ところで、シカは切符だけでなく紙であれば、ほとんど何でも食べてしまう。修学旅行で訪れた人も多いであろう、五重の塔で知られる「興福寺」の僧侶は、今回の件にからんで Twitter で注意を呼び掛けている。

興福寺にも問い合わせたところ、拝観券が食べられてしまう被害はお寺の回りで実際に起きるそうで、くれぐれも油断は禁物との話だった。

狙ってます!あなたの拝観券!(Twitter ユーザーの許諾を得て転載)
狙ってます!あなたの拝観券!(Twitter ユーザーの許諾を得て転載)

奈良とシカとの関係は、一説によると遠い昔、平城京と呼ばれる都だったころにさかのぼる。当時、シカは大貴族、藤原氏が祭った神の使いとして大事にされ、以来1,000年以上にわたって保護の歴史が続いてきたという。

今や奈良の象徴ともいえる生き物で、公園などでは人なつこいようすを見せる。だが観光客は忘れてはいけない。彼等は獣、飢えたアニマルなのだということを。