中央環状品川線の山手トンネルは、湾岸線の大井ジャンクションから3号線の大橋ジャンクションまでを繋ぐ約9.4kmの区間。都営地下鉄浅草線よりも深い場所を走り、最深部はなんと地下55メートルに達するというこのトンネルは、中央環状線が“都心部を囲むリング”となるための、最後に残ったピースでした。
「山手トンネルウォーク」は、その一部区間を歩けるイベント。普段は「歩行者立入禁止」の首都高に、大手を振って歩いて入れる、めったにないチャンスです。
当日の参加者はなんと2万人。駅からトンネルの入り口付近までの舗道では、参加者による軽い“渋滞”が発生していました。山手トンネルって渋滞を解消するための道路だったはず。なのに、開通前イベントで渋滞して、それもクルマではなく人で渋滞していて大丈夫か?そんな疑問がわいてしまうほど、イベントは大人気でした。
今日に限り、歩行者無料です!
不安と言えば事故。側道もなく、逃げ場の無い地下のトンネルで、事故や火災が発生したらどうなるんだろう?と、どうしても思ってしまいます。ましてこのトンネル、通常のトンネルよりもずっと長いのです。
イベントではそのような参加者の不安を解消するためか、非常口や非常電話、それに消火設備などの防災設備が展示されていました。
防災設備の中で、最も注目を集めていたのが「水噴霧設備」。火災が発生した際に、霧状の水を噴霧して延焼を防ぐ装置です。この装置、なんと1時間あたり300ミリという“猛烈な雨”に相当する水を噴霧できます。
地下深くで、1時間に300ミリの“猛烈な雨”を降らせます
2014年6月、茨城県つくば市にある防災科学技術研究所に、1時間に300ミリの雨を再現できる装置が設置されたことがニュースになりました。この実験設備で再現された300ミリの雨の中では、霧が立ち込めているかのように視界はホワイトアウト。車のワイパーも役に立たなくなるそうです。
その最新の実験装置なみの雨を地下55メートルで降らせるのが、山手トンネルの「水噴霧設備」です。火事が起こっても安心と思う反面、水で視界がホワイトアウトしたらどうしようという不安も頭をよぎります。
1時間あたり300ミリの“猛烈な雨”を降らせる「水噴霧設備」
でも、この装置を目にした子どもたちは大はしゃぎ。「来てよかったね!」と喜んでいる子どもも、大勢いました。
折り返し地点では、非常口を経由して反対側の車線へ。こちらは、ちょっとしたモーターショー。3月7日の通り初めで出走する「往年の名車」がずらりと並びます。そこにはホンダの「S800M(エスハチ)」や「NSX type S」、トヨタの「2000GT」の姿が。バイクでは、ホンダ「DREAM CB750FOUR(ドリーム)」の姿もありました。
モーターショー(?)後半は、「次世代のクルマ」。ここには、トヨタ「MIRAI」が展示されています。バイクでは、『Akira』の「金田バイク」のようだと評判のホンダ「NM4-02」が人気を集めていました。
「山手トンネルウォーク」の締めくくりは、非常階段の通行体験。約200段の非常階段を上って、地上に脱出(?)します。200段など、金刀比羅宮の1,368段に比べれば大したことはないはずですが、ここまで約6キロ歩いてきた足には意外とこたえます。首都高さんもそこは想定しているようで、途中には広めの休憩スペースが。火災や事故で避難しているときにも、きっとここで休憩する人はいるのでしょう。
通行体験のゴールは、山手通りの中央分離帯に設置された非常出口でした。地上は寒く、雨も降っていて、快適な地下が少しだけ恋しくなりました。
傘をさしたりしていました
この非常階段、チャンスがあれば、一度歩いてみるとよいかもしれません。途中、「このルート、本当にあってる?」と不安になる箇所があるからです。一度経験しておくと、いざというときの不安が軽減できそうです。
山手トンネルの開通は、2015年3月7日の16時です。