トヨタは「CES 2015」のプレス向け発表会で、水素社会の実現に向けた取り組みを発表した。水素社会の実現と水素自動車の普及に向け、約5,680件の燃料電池関連の特許を無償で提供する。

プレス向け発表会には理論物理学者の加來道雄氏が登壇し、燃料電池を用いた水素自動車は自動車産業に大変革をもたらす“ゲームチェンジャー”であることを強調した。



加來氏は、蓄音器や白熱電球を発明したトーマスエジソンが、自動車のエネルギーは電池であると主張していたことを紹介した。

「100年以上前、米国にはトーマスエジソンとヘンリーフォードがいた。実は2人は良き友人だった。ある日、2人は賭けをした。その賭けとは、未来の自動車を動かすエネルギー源は、何であるべきかというもの。エジソンはバッテリーに賭けたが、フォードはガソリンに賭けたのだ」

加來氏は物理学者として、未来の自動車のエネルギー源は水素を使った燃料電池(バッテリー)であるべきだと述べ、その理由を次のように説明する。

「完全な自動車のエネルギー源として必要な3つの条件。その1つ目は、この世界に豊富にある元素をベースにしたものであること。それは水素だ。2つ目は、そのエネルギーを使った自動車の可動部分ができるだけ少なく、仕組みがシンプルであること。水素を使った燃料電池車であれば、エンジンには機械的可動部分はない。3つ目は、自動車から排出される物質が汚染されていないことだ。水素自動車から排出される水は、飲むことができる」


加來氏はこのように述べ、水素自動車は環境汚染のない社会を作るための礎になると主張した。

米国トヨタの Bob Carter 氏は、トヨタは水素社会の実現と、水素自動車(FCV)の普及に向けた取り組みの一環として、トヨタが単独で保有している約5,680件の燃料電池関連の特許の実施権を無償で提供すると発表した。


この対応についてトヨタは、FCV 導入初期段階においては普及を優先し、開発・市場導入を進める自動車メーカーや水素ステーション整備を進めるエネルギー会社などと協調した取り組みが重要であるとの考えに基づくものだとしている。

特許実施権無償提供の具体的な内容としては、燃料電池スタック(約1,970件)、高圧水素タンク(約290件)・燃料電池システム制御(約3,350件)といった、FCV の開発・生産の根幹となる燃料電池システム関連の特許に関しては、これらの特許を実施して FCV の製造・販売を行う場合、市場導入初期(2020年末までを想定)の特許実施権を無償とする。

水素供給・製造といった水素ステーション関連の特許(約70件)に関しては、水素ステーションの早期普及に貢献するため、水素ステーションの設置・運営を行う場合の特許実施権を、期間を限定することなく無償とする。

Carter 氏はまた、FCV と住宅を電力ケーブルでつなぎ、FCV は停電時などの緊急用電源として利用できることもアピールした。